最近、「国債って危ないんでしょ?売って預金にしておいた方がいいでしょうか」という相談を受けることが多い。
国債を売って預金というのもおかしな話だ。預金には預金保険という制度があるので、元本が守られるというイメージがある。ところが、この預金保険は銀行が拠出した保険料で運営されており、お金が足りなくなれば国が保証することになっている。つまり、国債が危ないと思うなら、預金はもっと危ないので止めた方がいい。
もちろん、怖がって海外へ資産を逃がす人も多い。それもこれも財務省が1000兆円の債務ばかり強調してこのままでは危ないと煽っているからだ。最近はそうした批判を避けるために債務残高から金融資産を除いた「純債務残高」も出しているが、これも危険水準だと危機をあおる。
数字というのは論理的な説得材料として便利。ただ都合のいいように見せることができるが難点だ。結論ありきで数字は作ることができる。消費増税を決めたい財務省の主張もその一つと言えるだろう。
内閣府の国民経済計算によると、日本の国富は約3000兆円。国、地方、社会保険の勘定をすべて併せた一般政府も36兆円の資産超過となっている。つまり国際比較で使われる基準で計算した債務は1037兆円もあるが、一方で資産も1073兆円持っている。国は金融資産以外に不動産も大量に保有しているからだ。
内閣府 国民経済計算
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h22/tables/22ss4_jp.xls
いますぐに日本が破綻するという人も多いが、どうやったらいますぐ破綻するのか説明がつかない。このままお金がどんどん海外へ逃げれば、国債を買ってもらえなくなる。危機ばかりあおるのもいい加減にした方がいいのではないか。
現在は世界的な不況なので財政赤字が拡大するのは当たり前。もちろんミニバブルのときでも財政赤字が解消しなかったことを見ると構造的な赤字があるのは事実だし、今後の社会保障負担の増加を考えると構造的な赤字はどんどん膨らんでいくだろう。
それでもどうしてこんな世界的な不況期に大規模増税を実施するのか理解に苦しむ。今回の増税は財政の赤字を埋めることしかできない。つまり真水部分ではない。よく「税金を払っても、福祉で返ってくる」と言うが、そうにはならない。単純に経済にはブレーキ役を果たすだろう。ますます景気が悪くなれば、給料も下がり(時には職を失い)、消費どころではなくなる。
家計には余裕がなくなっている。この増税はダメージが大きすぎる。拙速な消費増税を避ける道はないものだろうか。
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家計の見直し相談センター